GIGAスクール端末50,000台の利用に耐えうる
ネットワークを短期整備

― セキュアな環境構築の秘訣とICTの未来 ―

世田谷区教育委員会/小中学校のネットワークインフラ整備の事例

GIGAスクール構想のもと、全国の学校で進んでいるICT学習。
株式会社オーエフでは、世田谷区教育委員会事務局様と株式会社NTTドコモ様と共に、
端末配備やネットワーク整備など、セキュアな学習環境構築を実施。
契約から運用開始までをわずか1ヶ月で実現した背景と秘訣をご紹介します。

―― 今回のプロジェクトが立ち上がった経緯を教えてください。

世田谷区・日高  令和元年にGIGAスクール構想の説明会が行われた際、令和2年度中に全ての公立小中学校にネットワークを整備し、1人1台の端末を導入する計画が急遽決まりました。それまでは、約40台×90校、世田谷区全体でも約4,000台のタブレット端末しか配備していませんでしたが、区立小中学校の全ての児童・生徒分となると約50,000台となります。その規模の端末と、各端末からのインターネット接続に耐えうるインフラを短期間で同時に整備する必要が生まれた訳です。説明会が行われたのが12月だったので、当然、来年度の予算は要求していないわけですから、慌てて財政部門と協議し、令和2年度のGIGAスクール整備事業に必要となる補正予算の要求準備に取り掛かるというところからスタートしました。それまで、世田谷区では他の多くの自治体と同様、教育センターにインターネットの接続を集約していましたが、各拠点のインターネット接続要求が一点に集中する集約型のネットワークではGIGAスクール構想で大幅に増加する端末数に対応できなくなることは明白であり、過去に例のない短期間での新たなネットワーク構築の必要性に迫られました。

―― 新しいネットワーク環境の構築に向けては、どのような流れだったのでしょうか?

世田谷区・日高  ネットワークにかかる負荷の大幅増加を考慮すると、今の通信速度では耐えられないと判断し、現状の設計からではなく、本格導入後にどのようなトラフィックになるかを想像しながら構成を決めていきました。予算要求するに当たって前提条件を決めないと見積りも取れないため、検討期間はかなり短かったです。そのため、令和2年度末に新たなネットワークを構築後、令和3年度の夏以降に「端末を同時接続させると回線が遅くなる」という苦情が各学校より出始めるという事態に直面しました。この際、考えうる解決策を多方面にヒアリングした後、最終的にN T T ドコモさん、オーエフさんにご相談の上、問題解決に向けた対応をお願いしたのですが、未知の部分が多い中、両社のスピーディーな対応力には本当に驚かされました。 

―― 他の区の教育現場でもICT環境整備は暗中模索だったのでしょうね

NTTドコモ・山本  弊社も初めての取り組みだったので、ベンダー状況やお客様の反応を見て試行錯誤を重ねました。プロバイダー協会の情報やNTT東日本の技術参考資料を確認しつつ、中には数百ページにも及ぶ資料を読み込まないと解決できない問題があったりして。そこはなんとかオーエフさんの助けもあって、2日かかけてようやく必要な情報が見つかるなんてこともザラにありました。資料に載っていない特殊な仕様なんかもあって、オーエフさんと一緒に慎重に調査・検証をしていきました。 

―― 仕様決定と導入までの流れを教えてください 。

世田谷区・日高  まず、ローカルブレイクアウトの方針を決めた上で、予算と速度を考慮してフレッツ光クロス回線を選定しました。ただ当時は集約型のネットワークでしたので、ネットワークの構成を変える必要がありました。また、これがちょっと難易度が高かったんですが、既存の教育ネットワークを活かさなければいけなかった。つまりネットワークのインターネットのルートを、既存のを残しながら新しいのを作るという、そういう2ルート化をすることになりまして。既存の教育ネットワーク、既存の集約型ネットワークを維持しつつ、90校に新しいのを作るというのはかなりハードルが高かった。 最初のうちはまだタブレットがそもそも全部の学校に行きわたっていなかったので、同時接続も少なくて問題はあまり聞こえてこなかったんですが、本格的な導入が進んだ夏以降から回線が遅いという苦情が出始めました。そこで、より高品質なサービスへの切替を迫られて、NTTドコモさんに協力を仰ぎました。

NTTドコモ・山本  オーエフさんから回線とプロバイダの切り替えで実際に速度があがったという他の自治体での事例をご紹介いただいて、じゃあそれで提案しましょう、と。提案から1ヶ月後には新規回線の導入やルータの設置、インターネット接続の設定を同時並行で進めていましたね。僕は2000年から教育の仕事をやっていますが、件数的にも今回のようなケースは初めてで。授業中は作業が出来ないので、限られた時間の中でやらなければいけないっていう、本当に異様な体験でした。誰でも現場で構築できる状態で工場出荷するゼロタッチプロビジョニング(ZTP)という方法をとり、実質1カ月くらいで90台の機器を納品することができました。GIGAスクールで初めて投入した案件だと思います。

―― オーエフ社は実際に構築する立場だったと思いますが、この短期間での導入という経験はこれまでにありましたか? 

オーエフ・森  初ですね。通常は機器の調達だけでも1カ月くらいかかるところ、それが受注と同時に物が届いて、しかも本来なら90台あれば設定試験でまた1カ月かかるところ、それも度外視して工場出荷状態で持っていくという。構築する立場としては、そもそも構成が当初分かっていなかったので、その構成にあったコンフィグを作らなければいけなかったというのと、この短期間でパイロット案件の一発勝負ということもあり、どこまで作りきるかというのは、苦労した点です。また、通常は現地に技術者を派遣して対応しますが、限られた時間とリソースの中で、技術者を派遣することなく、誰がやってもできるような仕組みを作らなければいけなかったのが、最大の難関でした。

―― 今回のオペレーションで品質を保持するために用いた仕組みや工夫はありましたか? 

オーエフ・森 今回の1番のゴールはゼロタッチプロビジョニングを使って短期間で納品することでしたので、それには現場のオペレーションの簡素化と、誰でも間違えずに扱えるスクリプトを作成しなければならず、弊社としてはそこの技術対応で苦労しました。現場を指揮していたフィールドエンジニアも、v6アドレスが割り当てられないなどのエラーが発生した際にどう切り分けるかを明記して、ちゃんと水が流れるようなフローを作る必要があって、そのフローの精度を高めることが特に難しかったです。パイロットが成功しないと、フローに予期せぬ問題が発生する可能性があるので、最初の1週間くらいはフィールドエンジニアが夜遅くまで残って内容を修正したり、追記したり、障害検証も検討しながら対応したのが苦労した点です。

NTTドコモ・山本  もう1つ、今回全体を通して良かったのは、工程の名寄せシステムをオーエフさんが独自で作ってくれたこと。つまり1カ月という限られた時間の中で、インターネットとプロバイダの開通状況を確認しながら、ルータを設置しなければいけなかった。しかもお客さんの時間にも合わせなければいけないし、その工程を管理するためのウェブサービスをオーエフさんが立ち上げてくれたおかげで、意思疎通もリアルタイムでできたし、お客さんにも報告を毎日ちゃんとできたので、このウェブサービスがあったからこその今回のプロジェクトの成功だったと思います。

―― 導入後の変化や効果について教えていただけますか? 

世田谷区・日高  以前は毎日のように学校から「ネットが繋がらない」「遅い」といった話が来てましたが、導入以降はほとんどなくなりました。同時利用時も安定していて、問い合わせの数も大幅に減少しました。安心して教育活動に専念できるICT体制を整えることができ、大変助かっています。 

―― ICT化が進む中で、今後の展望をお聞かせください。 

世田谷区・日高  従来ペーパーベースだったテストのCBT化(オンラインテスト化)が全国的に推進されています。現在、中学校において1学年のみでオンラインテストを実施した際はネットワークの問題は顕在化していませんが、将来的な中学校3学年同時での実施や定期テストでの活用等も想定し、現在の環境で対応できるように準備が必要です。 

―― 導入後定期テストのオンライン化についても進展があるのですね。 

世田谷区・日高  現在、文部科学省においてはMEXCBT上に自治体が作成した独自の問題を学習ポータルからアップロードしてテストを実施する試みを進めています。現時点では構想段階ですが、将来的にはM E X C B T 等で実施したC B Tデータ等を学習ログとして蓄積・分析するための基盤を整備し、各学校の傾向や個別の学習状況を把握し、個別アドバイスや保護者面談等に役立てていければと考えています。学習データの蓄積と分析を通じ、適切な支援とフィードバックが提供できればと考えています。

―― 蓄積したデータを未来に活かすことも重要ですね。 

オーエフ・森  コロナ禍を経て様々な価値観が多様化しましたが、情報の可視化・ネットワークの定量化の役割は今後ますます重要になります。当社もICTの側面から教育業界に貢献していきたいと思います。

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